離婚調停中の不動産売却は可能!手続上の欠点・利点・注意点を解説
公開:2024.10.25 更新:2024.10.25離婚調停中における不動産売却は、財産分与や新しい生活の準備を進める上で有効な手段ですが、手続きにはいくつかの利点と欠点があります。夫婦間で合意が得られれば売却は可能ですが、名義や財産分与に関するトラブルを避けるためには慎重な対応が必要です。
こちらでは、離婚調停中に不動産売却を行う際の手続上の欠点や利点、そして注意すべきポイントについて詳しく解説します。
目次
離婚による住居売却の時期は?調停中でも可?
離婚に伴う住居の売却は、財産分与や生活の再スタートを考える上で重要な決断のひとつです。しかし、売却のタイミングや手続きに迷う方も多いのではないでしょうか。特に離婚調停中の場合、住居の売却が可能かどうかや、どの時期が最適なのかは複雑な問題です。ここで、売却が可能なタイミングや調停中に売却を行う場合の注意点について解説します。
◇離婚に伴う不動産売却のタイミング
離婚に伴う不動産の売却タイミングについては、離婚前、調停中、離婚後のいずれでも可能です。離婚前に売却を進める場合は、夫婦間での合意がスムーズに進むため、離婚後のトラブルを避けやすいメリットがあります。調停中でも合意があれば売却は可能ですが、名義が異なる場合など、手続きが複雑になるケースもあるため注意が必要です。
離婚後に売却を行う選択肢もあります。この場合、急ぐ必要がなければ時間をかけて売却を進められるため、より高い価格で売却できる可能性があります。どの時期に売却するかは、夫婦の状況に合わせて柔軟に対応することが大切です。
◇離婚調停中でも不動産売却は可能
離婚調停中であっても、夫婦間で合意が取れれば不動産の売却はできますが、調停中の売却にはいくつかの注意点があります。特に、共有名義の場合、双方の合意が必要となるため、手続きが複雑になることがあります。
また、単独名義であっても、財産分与の対象となるため、売却額や利益の分配について明確な合意を得ておくことが大切です。調停中の売却は、今後のトラブルを避けるためにも、弁護士などの専門家に相談しながら慎重に進めることが重要です。
◇単独名義か共有名義によって手続きは変わる
離婚時の家の売却手続きは、名義の種類によって異なります。共有名義の場合、売却にはすべての名義人の同意が必要です。つまり、夫婦が合意しないと売却手続きを進めることは難しいということです。
一方、家が単独名義の場合、その名義者は法律上不動産を売却する権利がありますが、結婚後に購入した不動産であれば財産分与の対象となるため、夫婦で話し合いが必要です。また、相手が勝手に売却するのを防ぎたい場合は、裁判所に「不動産処分禁止の仮処分」を申請して対策を取ることができます。
離婚調停中に不動産売却をする場合の懸念点
画像出典:フォトAC
不動産売却は、相手の同意が必要であり、無断で進めるとトラブルに発展する可能性があります。また、売却により調停が長引くこともあり、婚姻費用の負担が増える恐れもあるため、慎重に対応することが重要です。
◇不動産は財産分与の対象である点に注意
結婚後に取得した不動産は、共有名義か単独名義かにかかわらず基本的に夫婦の共有財産とみなされます。財産分与の際には、この不動産は原則として2分の1ずつに分割されるため、特に注意が必要です。
調停中に相手の同意を得ずに勝手に売却してしまうと、相手の権利を侵害することになり、信頼関係が崩れ、調停がうまく進まなくなるリスクが高まります。さらに、売却によって得た金額を使い込んでしまった場合、後から返還を求められる可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
適切な手続きを踏まないと、後々大きなトラブルに発展する可能性があるため、弁護士などの専門家に相談しながら進めることが重要です。
◇売却後のトラブルに発展しやすい
離婚調停中は、既に別居していることが多いため、家の売却後にトラブルが発生しやすい状況です。例えば、一方が勝手に不動産を売却したり、売却価格や住居に対する意見の違いで口論になることがあります。
「もっと高い値段で売却したかった」や「やはり売却せずに住み続けたかった」といった主張が出ると、財産分与や今後の生活に影響を及ぼす可能性があります。このようなトラブルを避けるためには、家の処分方法について合意した内容を公正証書として残すことが重要です。
◇離婚調停自体が遅れてしまうリスク
不動産は財産分与の対象であり、持分にかかわらず原則として2分の1に分割されるため、勝手に共有持分を売却すると相手の不信感を招き、話し合いが難航する可能性が高まります。
これにより、離婚成立が遅れ、婚姻費用の支払いが長引くリスクもあります。調停中の不動産売却は、結果的に早期離婚を望む一方にとっては大きな負担となる恐れがあるため、慎重な対応が必要です。
離婚調停中の不動産売却には利点もある
不動産売却を早めに進めることで、離婚後のトラブルを回避し、経済的な不安を軽減できます。また、早期の現金化によって、離婚後の新しい生活をスムーズに進めやすいです。
◇早期の現金化が可能
共有名義の不動産を売却するには相手の同意や書類作成など手間がかかりますが、自分の持分だけを売却する場合は一人の判断で進められるため、手続きが簡単で早く現金化できます。
売却によって得た資金は、離婚後の新たな生活を始める際の生活費や、今後の住まいを整えるための資金として役立ちます。早期の現金化によって、経済的な不安を軽減し、離婚後の生活をよりスムーズに進められるでしょう。
◇離婚後に相手と連絡を取る必要がなくなる
家の売却が離婚後に持ち越されると、元配偶者と何度も連絡を取らなければならず、その過程を苦痛に感じることも少なくありません。そのため、「離婚後は元配偶者とできるだけ連絡を取りたくない」と考える方には、離婚前に家を売却することが大きな利点となります。
離婚前に売却を済ませておけば、離婚後のやり取りを最小限に抑え、新生活をスムーズに始めることが可能です。気持ちを切り替えて新たなスタートを切るためにも、離婚前の売却は有効な選択肢と言えます。
◇離婚後に想定されるトラブルを避けられる
離婚後に連絡が取れなくなったり、売却手続きが進まなかったりするケースはよくあります。また、売却後に得た現金の配分を巡って金銭トラブルが発生することも考えられます。こうした問題を避けるためには、離婚前に不動産を売却しておくことが効果的です。離婚前に売却を済ませておけば、手続きがスムーズに進み、後のトラブルを未然に防げます。
離婚調停中の不動産売却で注意すべき点
離婚調停中に不動産を売却する際には、名義や財産分与、住宅ローンの残債、売却後の利益配分などを確認しなければなりません。これらを注意しないと、離婚後にトラブルが発生する可能性が高くなるため、慎重な対応が求められます。
◇名義と財産分与について確認する
不動産の登記簿に記載されている名義が「単独名義」か「共有名義」か事前に確認する必要があります。単独名義の場合でも、婚姻中に取得した不動産は財産分与の対象となるため、双方の合意が不可欠です。
特に共有名義の場合、すべての名義人の許可が必要で、どちらかが売却に反対する場合、スムーズに進められない可能性もあります。名義を確認し、財産分与を明確にすることが、トラブル回避のために重要です。
◇住宅ローン残債の取り扱いに注意する
住宅ローンの残債額を確認し、家の売却額でローンを完済できるかをしっかり把握することが大切です。もしも、売却額が残債を上回る「アンダーローン」であれば、売却後にローンを完済したうえで、残ったお金を夫婦で分けることが可能です。
しかし、売却額が残債に届かない「オーバーローン」の場合、足りない分を手持ちの資金で補うか、離婚後も引き続きローンを返済しなければなりません。住宅ローンの残債状況を正確に把握しておくことが、スムーズな不動産売却とその後の生活設計において重要なポイントとなります。
◇公証役場で離婚給付等契約公正証書を作成する
離婚給付等契約公正証書は、財産分与や慰謝料、養育費など、離婚に伴う重要な取り決めを公的に証明する書類です。公証役場で作成されるこの証書は、法的効力を持つため、後々のトラブルを防ぐと共に、合意した内容が確実に守られる保証になります。
特に、不動産売却後の利益分配についても証書に明記しておくことで、離婚後の不安や紛争を避けることができ、安心して新しい生活を始められるでしょう。
離婚に伴う住居の売却は、財産分与や生活の再スタートにおいて重要な決断となります。売却時期は離婚前、調停中、離婚後のいずれでも可能ですが、タイミングや手続きに注意が必要です。
共有名義の場合、すべての名義人の同意が必要であり、単独名義でも財産分与の対象となるため、夫婦間での話し合いが欠かせません。 調停中でも合意があれば売却は可能ですが、無断での売却はトラブルに発展する恐れがあります。
名義確認や住宅ローンの残債、利益配分なども慎重に検討し、弁護士などの専門家の助言を受けることが大切です。適切な手続きを踏まえ、離婚後の生活を円滑に進めるための準備が重要となります。