離婚時に不動産売却を行う最適なタイミング・注意点とは?
公開:2024.09.19 更新:2024.09.19離婚時に不動産を売却する際には、タイミングと注意点を慎重に考える必要があります。財産分与が現金であれば簡単に分けられますが、不動産の場合はそうはいきません。離婚前に売却するのか、離婚後に売却するのかで税金や手続きの進め方が変わるため、状況に応じた判断が求められます。また、不動産売却には時間がかかるため、計画的に進めることが重要です。
目次
離婚時に不動産売却を行うタイミングは?
離婚する場合、問題となることのひとつが財産分与です。その財産がすべて現金であれば、簡単に分け合うことができますが、その財産が不動産の場合はそう簡単にはいきません。ここではまず、離婚時に不動産売却を行うタイミングについて解説します。
◇離婚前に不動産売却を行う場合
家を売却するには時間がかかることがあるため、離婚を急いでいない場合は、売却を先に進めるとスムーズです。ただし、離婚前に家を売却してその売却益を分け合うと、贈与とみなされて贈与税が課せられる可能性があります。特に、家の名義を持たない方が売却益を受け取ると、税金の負担が発生することがあります。
このようなリスクを避けるため、急いで離婚する必要がない場合は、家を売却してから離婚することを検討するとよいでしょう。離婚後の財産分与であれば、財産分与の控除を受けられるため、贈与税は課されません。
◇離婚後に不動産売却を行う場合
離婚後に不動産を売却する場合、売却活動に専念できることが大きなメリットです。離婚に伴う新居への引っ越しや各種手続きがすべて終わった状態で売却に集中できるため、ストレスを減らしながら進めることができます。
また、余裕を持って売却活動に取り組むことで、子どもの進学などのタイミングに合わせて売却することも可能です。集中して活動できる分、高値での売却につながりやすく、納得のいく形で手続きを進められるでしょう。
ただし、売却が年をまたぐと、その年の固定資産税を支払う義務が発生するため、費用負担が増えることがあります。また、売却活動が長引く場合や重要な決定が必要な場面では、元配偶者との連絡を継続する必要があります。お互いが積極的に連絡を取り合える関係であれば問題ありませんが、連絡が難しい場合は売却が滞る可能性もあります。
◇離婚前後どちらでも査定は大切
離婚の際に不動産を売却する場合、タイミングも重要ですが、それと同じくらい事前に査定を受けることが大切です。査定を行うことで、家の市場価値を把握し、離婚後の計画を立てやすくなります。
査定の金額は不動産会社によって異なるため、必ず複数の不動産会社に見積もりを依頼しましょう。そして、金額だけでなく、不動産会社の信頼性や担当エージェントの対応も確認することが大切です。最も信頼できる不動産会社を選び、売却を任せることで、離婚前でも離婚後でも、スムーズで納得のいく不動産売却が期待できます。
離婚時に不動産売却を行う方法
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不動産を売却するといっても、その方法はひとつだけではありません。では、不動産を売却する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
◇不動産会社に仲介を依頼する
離婚時に不動産を高値で売却したい場合、不動産会社に仲介を依頼するのが有効な方法です。仲介を利用すると、家を相場に近い価格で売却できる可能性が高くなります。不動産会社は、過去の取引データや市場の動きをもとに、家がどれくらいの金額で売れるかを査定し、適切な売却価格を設定してくれます。
ただし、仲介での売却には時間がかかることが一般的です。通常、売却活動には3か月から半年程度の期間が必要となるため、余裕を持って計画を立てることが重要です。
◇不動産会社に売却する
離婚時に「早く家を売却したい」「周りに知られたくない」という場合、不動産会社に直接売却する「買取」という方法が適しています。買取では、不動産会社が直接家を買い取ってくれるため、一般の個人に家を売り出す必要がありません。この方法では、最短1週間で売買契約ができ、1か月以内にすべての手続きが完了します。
ただし、買取の場合、売却価格は相場の6~8割程度になるのが一般的です。そのため、高値での売却を目指すよりも、早く確実に売却したい場合に適しています。また、仲介と同様に、住宅ローンが残っている場合は、売却価格でローンを一括返済できるかを事前に確認しておくことが大切です。
◇任意売却する
離婚時に家を売却しようとした際、査定額が住宅ローンの残高を下回り、売却してもローンを完済できない「オーバーローン」の状態であれば、「任意売却」という方法があります。通常、住宅ローンを完済しないと抵当権が解除されず、家を売ることが難しいですが、任意売却では金融機関の了承を得ることで、抵当権を解除して家を売却することができます。
任意売却は、競売とは異なり、市場の相場に近い価格で家を売却できる可能性があるため、より有利な条件での売却が期待できます。しかし、任意売却を行うと、信用情報に記載され、将来のローンやクレジット利用に影響が出ることがあります。
◇リースバックする
離婚時に家を売却しながらも、現在の家に住み続けたい場合には「リースバック」という方法があります。リースバックとは、家を不動産会社やファイナンス会社に売却し、その後賃貸契約を結んで、家賃を支払いながら引き続き住むことができる方法です。この方法を利用すれば、子どもの転校や仕事への影響を避けつつ、家を早く売却することができます。
ただし、リースバックでは売却金額が相場より低くなることがあり、通常は相場の7割程度になることが多いです。また、住宅ローンを完済する必要があるため、事前に資金計画を立てておくことが重要です。
離婚時に不動産売却を行うメリット・デメリット
離婚時に不動産を売却するかどうかは、大きな決断となります。家を売却することで、財産の清算や新たな生活のスタートをスムーズに切ることができる反面、手続きや費用、税金などさまざまな課題が生じることもあります。
◇離婚時に不動産売却を行うメリット
まずはメリットからご紹介しましょう。
公平な財産分与ができる
上述したように共有財産がすべて現金であれば、簡単にしかも公平に分け合うことができますが、不動産を公平に分け合うのは簡単ではありません。しかし不動産を売却して現金化すれば、公平に財産分与が行えます。
新たな生活資金ができる
不動産を売却すれば、住宅ローンの残債を差し引いても共有財産の現金と合わせればある程度まとまったお金を手にできます。そうなれば離婚後の新たな生活資金として使用することも可能です。
面倒なやりとりが不要
離婚の相手方が住宅ローンの保証人である場合や不動産が共有名義になっている場合、その不動産を所有し続ける限り、離婚相手とのやり取りが必要になります。しかし不動産を売却すれば、その後離婚相手とのやり取りは一切不要です。
◇離婚時に不動産売却を行うデメリット
続いては離婚時に不動産売却を行うデメリットについてです。
住み慣れた家を手放さなければならない
不動産を売却すると、住み慣れた家を手放さなければならないため、その家に愛着がある場合は大きなデメリットとなります。ただ、上述したリースバックという方法で売却すれば、自分か離婚相手どちらか一方とはなりますが、家を売却した後も毎月家賃を支払いながら住み続けることは可能です。
オーバーローンの場合は債務が残る
不動産を売却しても住宅ローンを完済できるとは限りません。その場合は債務が残るため、所有していない不動産のためにローンを払い続けることになり、経済的にも精神的にも大きな負担となります。
離婚時に不動産売却を行う際の注意点
離婚時に不動産を売却する際には、さまざまな注意点を考慮する必要があります。売却のタイミングや手続きの進め方、税金の負担など、事前にしっかりと準備しなければならないことが多くあります。また、感情的な状況の中で冷静な判断が求められるため、慎重に対応することが重要です。
◇不動産が共有財産か特有財産か
共有財産は、夫婦が共同で保有する財産で、離婚時に財産分与の対象となりますが、特有財産の場合は夫婦の一方のみに帰属する財産で、財産分与の対象となりません。つまり、その不動産が相手の特有財産である場合は、売却してもあなたにお金は一切入ってこないということになります。
◇不動産の名義
不動産を売却する場合は、その不動産が誰の名義になっているのか確認しておくことも大切です。例えば、不動産が夫婦の共有名義となっている場合、不動産売却には登記名義人全員の許可が必要となるため、どちらか一方が売却に反対するとその不動産を売却することはできません。
スムーズに売却を進めるためには、不動産の登記名義を確認し、共有名義になっていた場合の対策を考えておくことが必要です。
◇離婚後はなるべく早く売却する
離婚成立後2年経過すると、財産分与の請求権は失効してしまいます。そうなってしまうと財産分与を請求できなくなってしまうため、不動産を売却する場合は離婚後なるべく早く行い、遅くとも離婚後2年以内に行うことが必要です。
◇離婚が売却理由でも不動産の価値に影響はない
事故物件なら話は別ですが、不動産の売却理由が離婚であってもその不動産の価値に影響はありません。離婚は「縁起が悪い」といった理由で、購入希望者から敬遠される可能性はありますが、売却理由など気にしないという購入希望者も少なくないため、気にせず売却しましょう。
離婚時に不動産を売却する際のタイミングや方法は重要です。離婚前に売却すると、贈与税のリスクがあるため慎重な判断が必要です。一方、離婚後に売却すれば手続きに専念でき、高値での売却が期待できますが、固定資産税や元配偶者との連絡が必要になることがあります。
不動産売却には仲介、買取、任意売却、リースバックなどの方法があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。査定は売却前後にかかわらず複数の不動産会社に依頼し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。 売却時には、共有財産か特有財産か、不動産の名義、税金などの注意点を把握し、適切な対策を講じましょう。